「転職すると退職金がリセットされるのか」「次の園に退職金はあるのか」。このページは、園の制度ごとに、期間のつながり方と、退職のときにすることを分けて書きます。退職金の金額の目安は書いていません。金額は、制度ごとの計算方法と、自分の本俸・期間で決まるからです。

保育士の退職金は、園の制度で決まる

制度どんな園が入るか金額の決まり方職員の負担
社会福祉施設職員等退職手当共済(福祉医療機構)社会福祉法人が経営する対象施設(契約できるのは社会福祉法人に限られる)退職前の平均本俸をもとにした計算基礎額×期間ごとの支給乗率なし
中小企業退職金共済(中退共)中小企業の条件に当たり、加入した事業所納めた掛金の月数と額によるなし(掛金は全額事業主が負担)
公立の条例自治体が設置する園自治体の退職手当条例による—
法人独自の制度・上乗せの共済法人の就業規則(退職金規程)による規程による規程による

出典:社会福祉施設職員等退職手当共済法、福祉医療機構「社会福祉施設職員等退職手当共済制度のご案内(2026年度)」p3・p7、同「制度のあらまし」、中小企業退職金共済事業本部「加入の条件」、地方自治法第204条。取得日:2026年9月28日。

  • 福祉医療機構の共済は、職名や常勤・非常勤の区別ではなく、勤務時間などの要件で加入対象が決まります。パートでも対象になることがあります。
  • 株式会社などが運営する園は、福祉医療機構の共済には入れません。中退共や法人独自の制度があるかを確かめてください。
  • 常時10人以上の労働者を使用する場合、退職手当の定めがあれば就業規則に書かなければなりません(労働基準法第89条柱書・第3号の2)。退職金を払うこと自体は、法律で義務づけられていません。

保育士の退職金は、転職すると期間が通算される?制度別の表

今の園の制度同じ制度の園へ移る場合別の制度の園へ移る場合退職のときにすること
福祉医療機構の共済前の園で1年以上加入し、退職手当金を請求せず、退職の日から3年以内に次の対象施設で加入し、機構に申し出れば、期間を合算できる通算の仕組みは見当たらない「請求する」か「請求せずに合算を待つ」かを決める
中退共前の企業で決められた期間以上掛金を納め、退職金を請求せず、退職後の期限内に次の企業で中退共に加入すれば、申し出て通算できる(期間と期限は中退共の「通算制度」で確認)特定退職金共済との相互通算がある。退職金を未請求であること、退職後の期限内に移転先へ加入・申出すること、団体間の引渡契約などの条件を中退共で確認。WAMとの通算を示すものではない退職金共済手帳などで請求の手続き
公立の条例自治体の条例による。例:さいたま市は、退職の日かその翌日に再び職員になった場合に期間を引き継ぐ私立の園の期間とはつながらない自治体の手続きによる
法人独自の制度法人をまたいでつながることは、規程に定めがない限り考えにくい—退職金規程を確かめて請求

出典:社会福祉施設職員等退職手当共済法第7条・第11条・平成28年法律第21号附則第28条、福祉医療機構「制度マニュアル」(令和8年度)p50、同「平成28年4月1日施行の制度改正」p7、中小企業退職金共済事業本部「通算制度」「加入の条件」、さいたま市職員退職手当条例第11条第3項。取得日:2026年9月28日。

  • 福祉医療機構の合算の期限(退職の日から3年以内)は、平成28年4月1日以後に退職した人に当てはまります(共済法第11条第8項、平成28年法律第21号附則第28条第1項)。古い記事にある改正前の期限は、今の期限ではありません。
  • 共済の加入期間が1年に満たないで退職したときは、退職手当金は支給されません(共済法第7条)。
  • 育児休業の期間は、原則として月数の2分の1が期間に数えられます。ただし、開始月・復帰月が勤務日数などの規定で算入される場合は、その月を半分にはしません(共済法第11条第4項・同項ただし書)。
  • 間に対象外の職場をはさんだ場合など、個別の事情がある場合は、福祉医療機構に確かめてください。

退職のときに「請求」を選ぶと、その期間は次の園で合算できません。次の園が同じ共済に入っているかが分からないまま請求しないよう、転職先の制度を先に確かめてください。次の園に聞きにくい場合は、転職エージェントの担当者に確認を頼む方法もあります(転職エージェントの比較の早見表)。

保育士の退職金で、福祉医療機構の共済の金額の計算

福祉医療機構の共済の退職手当金は、退職前の平均本俸で決まる計算基礎額に、加入期間に応じた支給乗率をかけて計算します。金額は、福祉医療機構の「退職手当金額早見表」や計算シミュレーションで確かめられます。

  • 1年未満の端数や、1か月に勤務した日数が少ない月の扱いなど、期間の数え方には決まりがあります。
  • 平成28年3月31日以前から加入している人には、経過措置があります(平成28年法律第21号附則第28条第2項)。
  • 処遇改善等加算による手当が本俸に含まれるかは、園の給与規程によります。福祉医療機構の制度マニュアルは、給与規程での定め方しだいとしています。

この記事では、金額の例は載せていません。早見表の金額は、計算基礎額と期間で大きく変わるためです。

保育士の退職金を、入職前・在職中・退職時に確かめるリスト

入職前

  1. 労働条件通知書の「退職金」の欄(有・無)と、「中小企業退職金共済制度」の欄(加入している・していない)を確かめる。
  2. 就業規則の退職金規程があるかを確かめる。
  3. 福祉医療機構の共済の対象施設か、自分が加入対象かを聞く。

在職中

  1. 加入している制度の名前と、加入した日を控えておく。
  2. 育児休業の期間があれば、その期間も控える。

退職時

  1. 福祉医療機構の共済は、次の園でも同じ共済に入るかを確かめてから、「請求」か「請求せずに合算」かを決める。
  2. 「退職所得の受給に関する申告書」を出す。出さないと、支払額に一律の税率をかけた所得税等が源泉徴収され、確定申告で精算することになります(税率は国税庁 No.1420 で確かめてください)。
  3. 退職手当の請求権の時効は5年です(労働基準法第115条、附則第143条による読み替え)。

出典:厚生労働省「労働条件通知書(一般労働者用)モデル様式(令和8年10月1日以降使用)」、労働基準法第89条・第115条・附則第143条、国税庁 タックスアンサー No.1420。取得日:2026年9月28日。

辞める手続き全体の順番は、保育士の転職の流れにまとめています。

保育士の退職金について、この記事では分からないこと

  • 保育士の退職金の平均額や相場(制度が違うため、この記事では示していません)。
  • 都道府県や社会福祉協議会などが行う上乗せの共済の中身。
  • さいたま市以外の自治体の退職手当条例。
  • 退職手当が支払われる時期(園や制度によります)。
  • 福祉医療機構の共済と、ほかの制度の間で期間をつなげる例外があるか。

保育士の退職金でよくある質問

保育士の退職金は、どこの園でももらえますか?

園によります。退職金は、園が入っている共済や、公立なら自治体の条例、私立なら法人の就業規則(退職金規程)で決まります。労働基準法は、常時10人以上の労働者を使用する場合、退職手当の定めがあれば就業規則に書くことを求めていますが、退職金を払うこと自体を義務づけてはいません。

福祉医療機構の退職手当共済では、何年働けば退職金が出ますか?

社会福祉施設職員等退職手当共済法では、加入期間が1年に満たないで退職したときは、退職手当金は支給されないとされています。1年以上なら、退職前の本俸をもとにした計算基礎額と、期間に応じた支給乗率で金額が決まります。

転職したら、福祉医療機構の退職手当共済の期間はリセットされますか?

条件を満たせば通算(合算)できます。前の園で1年以上加入し、退職手当金を請求せず、退職の日から3年以内に次の対象施設で加入し、機構に申し出ることなどが条件です(社会福祉施設職員等退職手当共済法第11条第8項)。退職時に請求してしまうと、その期間は通算できません。

福祉医療機構の退職手当共済と中退共の期間は、通算できますか?

今回確かめた公式の案内では、2つの制度の間で期間を通算する仕組みは見当たりませんでした。中退共の案内では、中退共に加入している職員は福祉医療機構の退職手当共済に加入できないとされています。移る前に、次の園の制度を確かめてください。

退職金に税金はかかりますか?

退職金は退職所得として課税されます。国税庁の案内では、「退職所得の受給に関する申告書」を出していないと、支払額に一律の税率をかけた所得税等が源泉徴収され、確定申告で精算することになります(税率は国税庁 No.1420 で確かめてください)。退職のときに、申告書を出したかを確かめてください。

更新履歴

2026年9月28日:社会福祉施設職員等退職手当共済法、福祉医療機構の制度のあらまし・パンフレット(2026年度)・制度マニュアル・平成28年改正資料、中小企業退職金共済の案内、地方自治法第204条、さいたま市職員退職手当条例、労働基準法、モデル労働条件通知書、国税庁 No.1420 を確認して新規作成。制度別の通算の表と、時点別の確認リストを掲載。 2026年9月29日:冒頭の答えに、金額を一つで示せない理由(制度ごとの計算の仕方)と、1年未満は支給されないことを入れた。 2026年9月29日:題名を「問いと答え」の形にし、冒頭の答えを短くした(前の答えと根拠は「根拠と補足」に移した)。 2026年9月30日:監査の指摘に対応(指摘 LAW-05 を修正。公表日を確認できない資料に基づく数字 11件を外すか、公表日のある資料に付け替え)。修正箇所の一次資料を照合。出典ごとの取得日は変えていない。