「月3時間なんて、うちの園とは違う」。そう感じる人は少なくないはずです。このページでは、統計の数字が何を数えたものかを確かめたうえで、自分の残業を話し合いに使える形で記録する方法と、転職先で残業を確かめる質問をまとめます。記録表と質問は編集部の提案です。

保育士の残業は、統計で月何時間?

厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、2025年6月の保育士の超過実労働時間は月3時間でした。企業規模別に見ると、1,000人以上が5時間、100〜999人が2時間、10〜99人が3時間です。

表1 区分(保育士・一般労働者・男女計)所定内実労働時間数超過実労働時間数
企業規模計(10人以上)163時間3時間
1,000人以上160時間5時間
100〜999人161時間2時間
10〜99人164時間3時間

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種 第1表(Excel)、男女計の保育士行(40行)。企業規模計はF40・G40、1,000人以上はN40・O40、100〜999人はV40・W40、10〜99人はAD40・AE40。全国・産業計・民営事業所。対象は2025年6月分。公開(更新)日:2026年3月24日。取得日:2026年9月27日。男女別の超過実労働時間は、男・女とも3時間(同表185行・330行のG列)。

※「超過実労働時間数」は、事業所の就業規則などで定められた所定労働日の始業時刻から終業時刻までの時間以外に、実際に労働した時間数などです(厚生労働省 主な用語の説明)。「一般労働者」は短時間労働者以外の労働者で、正社員だけを指す区分ではありません。

表1から言えることは2つです。

  • 月3時間は「所定外」の時間です。 労働基準法でいう「法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間」とは、数える線が違います。
  • 規模で差はあっても、どの区分も月5時間以内です。 ただし、これは各事業所が調査に報告した6月1か月分の値です。行事が多い月や年度末の値ではありません。

一方で、働く人に直接たずねた調査には、別の姿も出ています。こども家庭庁の補助事業として三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った調査では、正規職員の1日の平均的な勤務時間(残業を含む)は、「8時間を超えて10時間以下」61.4%、「10時間を超えて12時間以下」4.8%、「12時間超」0.4%で、合わせて66.6%でした。子どもから離れて事務などを行う時間(ノンコンタクトタイム)は「0分」が34.5%で最も多い回答でした。

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「保育士等の意識及び業務負担軽減に関する調査研究 報告書」(令和7年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業)第2章p3・図表3-58(p84)・図表3-66(p92)。調査期間2025年12月25日〜2026年1月26日、全国の保育所等を通じたWeb中心の調査、保育士票の有効回収16,902件、施設票の参考回収率15.0%。報告書は2026年3月、公表日は2026年4月23日。取得日:2026年9月27日。

※回答した園・人に偏りがありうる調査で、全国の保育士の割合を推計したものではありません。勤務時間には休憩時間を含むかどうかを、この記事では確認できていません。そのため、上の賃金構造基本統計調査の値と差し引きして「記録されていない残業」を計算することはしていません。

保育士の残業「月3時間」を、自分の園と比べる前にそろえる5点

保育士の残業を統計と比べるなら、次の5点をそろえてからにします。そろわないまま「平均より多い・少ない」と判断すると、違うものを比べることになります。

  1. 数える線: 統計は所定の時間を超えた分です。自分の比較では、所定始業前・所定終業後・所定休日に実際に働いた時間をそれぞれ記録して合算します。終業後の時間だけで比べないようにします。
  2. 時期: 統計は2025年6月の1か月分です。自分の記録も、行事の月とそうでない月を分けます。
  3. 誰が数えたか: 統計は事業所が報告した時間です。自分の記録と園の記録(タイムカードなど)が違う日は、両方を残します。
  4. 働き方の区分: 統計は一般労働者です。短時間勤務・パートの人は、この値と比べません。
  5. 職場の規模: 企業規模で値が違います(表1)。法人全体の規模で比べます。

なお、2019年の同じ調査の値と比べて「減った」と書く記事もありますが、この記事では2時点だけで増減の傾向は判断しません。

保育士の残業のうち、労働基準法で割増賃金(通常の賃金の2割5分以上)の対象になるのは、原則として法定労働時間を超えて延長した時間です。所定の時間を超えた分が、すべて割増になるとは限りません。

  • 法定労働時間: 休憩時間を除き、1週40時間・1日8時間を超えて労働させてはならないと定められています(労働基準法第32条)。
  • 36協定: 法定労働時間を超えて働かせるには、労使の協定(36協定)が必要です。延長の限度時間は原則として1か月45時間・1年360時間です(同第36条)。
  • 割増の率: 延長した時間の割増は2割5分以上です(同第37条、割増賃金の率の最低限度を定める政令)。

編集部の例示で考えます。所定労働時間が7時間30分の日に、実際には8時間30分働いたとします。

表2 数える線(編集部の例示)この日の時間扱いの目安
所定の時間を超えた時間(所定外。この例は終業後の60分)60分統計の「超過実労働時間」と同じ考え方の線
うち1日8時間を超えた時間(法定外)30分労働基準法の割増の対象になりうる時間
うち所定を超え、8時間以内の時間30分割増の対象かどうかは、就業規則・賃金規程の定めによる

※例示であり、実在の園の勤務時間ではありません。週40時間の計算、変形労働時間制、休日労働・深夜労働などの定めによって扱いは変わります。この例で金額は計算していません。給与明細の残業代の見方は、保育士の給料の照合表の「残業等の扱い」の行で確かめられます。

公立の園で地方公務員として働く場合は、労働基準法の一部の規定が適用されないなど、別の定めがあります(地方公務員法第58条)。この記事の説明をそのまま当てはめず、勤務先の条例・規則で確認してください。

保育士の残業を、話し合いに使える形で記録するには?

保育士の残業は、日ごとに所定の始業・終業と実際の始業・終了を並べ、所定始業前・所定終業後・所定休日に働いた時間を合わせて記録します。していた業務も一緒に残します。園に伝えるときも、相談窓口に行くときも、事実を並べた記録が話の土台になります。

厚生労働省のガイドラインは、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とし、使用者の明示または黙示の指示で業務に従事する時間は労働時間に当たるとしています。使用者が始業・終業時刻を確認する方法は、原則として自ら現認するか、タイムカードなどの客観的な記録によるとされ、自己申告制の場合も、申告できる時間外労働の時間数に上限を設けて上限を超える申告を認めないなどの措置を講じてはならないとしています(厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)。

保育士の残業の記録表を保存する(CSV)

表3 記入する項目書き方なぜ分けるか
日付・行事の有無・所定休日か例:運動会の前週。シフト上の休日に出た日は「所定休日」と書く行事の月を分け、休日に働いた時間も落とさないため
所定の始業時刻・所定の終業時刻その日のシフト上の時刻(所定休日は空欄)統計と同じ「所定外」を数える基準
実際の始業時刻・実際の終了時刻実際に仕事を始めた時刻と、最後の業務を終えた時刻早番・準備と、終業後の両方を落とさないため
休憩を取れた時間実際に取れた休憩の分数実労働時間から休憩を除くため
実労働時間実際の始業〜終了から休憩を除いた時間1日8時間(法定)を超えたかを見るため
所定外の時間(始業前+終業後+所定休日)3つを分けて書き、合計も書く統計の「超過実労働時間」と同じ範囲で比べるため
うち1日8時間を超えた時間実労働時間が8時間を超えた分(週40時間や変形労働時間制は別に確認)割増の対象になりうる時間を分けるため
所定外にしていた業務書類、製作、会議、研修など誰の指示・どの期限による業務かを話すため
園の記録の時刻タイムカード等に残った時刻自分の記録と違う日を見つけるため
伝えた日と相手・回答例:主任に口頭で相談同じ話を繰り返さず、次の確認日を決めるため

この表は編集部が作った記録用の例です。記入した結果で、違法かどうかや、支払われるべき金額を判定するものではありません。園児や保護者の個人情報は書かず、自分の勤務と業務の事実だけを残してください。家に持ち帰った作業は、保育士の持ち帰り仕事の記事で別に整理しています。

保育士の残業が多いとき、誰に相談する?

保育士の残業を減らしたいときは、まず園の中で、記録をもとに業務の分担や締切の調整を相談します。記録と支払いが合わない、話し合っても変わらないという場合は、公的な窓口に相談できます。

  • 園の中: 主任、園長、法人の人事など。残業の申請や記録の方法、業務の分担を確かめます。
  • 労働基準監督署: 賃金、労働時間などの法令違反について相談できます。
  • 総合労働相談コーナー: 労働条件をはじめ、職場のトラブルを幅広く相談できます。

窓口の種類と役割は、厚生労働省の労働基準行政の相談窓口で確認できます。受付時間や所在地は、窓口ごとの最新の案内で確かめてください。相談したことで、園の対応や結論が決まるわけではありません。

保育士の残業を転職先で確かめるには、「残業少なめ」という表示ではなく、記録と実績の仕組みを聞きます。次の4問は、表3の記録と同じ考え方で作った編集部の質問例です。

  1. 出退勤は、タイムカード・ICカードなどで記録していますか。自己申告の場合、申告できる時間に上限はありますか。
  2. 行事がある月の、正規職員の残業時間の実績はどのくらいですか。
  3. 職員会議や園内研修は、勤務時間内に行いますか。時間外の場合、残業として記録されますか。
  4. 書類や記録を書く時間は、シフトの中にありますか。

家での作業(持ち帰り)の有無を聞く質問は、持ち帰り仕事の記事の質問表に分けています。

面接で聞きにくい場合は、紹介会社を通して確認を頼む方法もあります。紹介会社を使うかどうかは、希望する地域・資格・働き方に対応しているかを先に確かめてから決めます。保育士の転職エージェントの比較で、応募先への条件確認を頼めるかを比べてください。回答は、記入した日付と回答者と一緒に残します。

保育士の残業について、この記事では分からないこと

保育士の残業について、この記事で答えられないことを先に書いておきます。

  • 自分の園の残業時間や、記録されていない時間の量: 統計は事業所の報告、Web調査は回答者の答えで、どちらも個別の園の実態を示しません。
  • 違法かどうか、未払いの金額: 記録表は事実を整理するためのもので、判定には就業規則・賃金規程・協定の内容と、個別の事情の確認が必要です。
  • 公立の園・変形労働時間制の職場での扱い: 定めが異なるため、この記事では確認していません。
  • 3時点以上の推移: 過去の年の表を今回は照合していないため、増えている・減っているとは書いていません。

保育士の残業でよくある質問

保育士の残業は、平均で月何時間ですか?

厚生労働省の2025年賃金構造基本統計調査では、一般労働者・男女計・企業規模10人以上の保育士の超過実労働時間は月3時間(2025年6月分)です。事業所が報告した、所定の始業から終業までの時間以外に働いた時間で、記録されていない時間は含まれていない可能性があります。

所定の時間を超えて働いた分は、すべて1.25倍になりますか?

そうとは限りません。労働基準法の割増(2割5分以上)は、法定労働時間を超えて延長した時間などが対象です。所定の時間が8時間より短い場合、所定を超えても法定の範囲内の時間があります。変形労働時間制などの定めでも扱いが変わるため、就業規則と給与明細で確かめてください。

記録されていない残業は、どうすればよいですか?

日ごとに所定と実際の始業・終業、所定休日に働いた時間、していた業務を書き残し、園の記録と違う日を園に伝えます。解決しない場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。違法かどうかは、この記事や記録表では判定しません。

公立の保育園でも、同じ説明が当てはまりますか?

この記事の法律の説明は、民間の園で働く場合を前提にしています。地方公務員には労働基準法の一部の規定が適用されないなど別の定めがあり、この記事では公立園での扱いを確認していません。勤務先の条例・規則や人事担当で確かめてください。

残業の少ない園は、求人票で見分けられますか?

求人票の「残業少なめ」だけでは判断できません。出退勤の記録方法、自己申告に上限を設けていないか、行事前の月の実績、会議や研修の時間の扱いを、見学や面接で具体的に聞いてください。

更新履歴

2026年9月27日:賃金構造基本統計調査(2025年6月分)の保育士行の所定内・超過実労働時間を原表で照合して掲載。所定外と法定外の違い、3本線の記録表(CSV)、応募前に聞く4問を追加。 2026年9月29日:題名を「問いと答え」の形にし、冒頭の答えを短くした(前の答えと根拠は「根拠と補足」に移した)。 2026年9月30日:監査の指摘に対応(指摘 SAL-03 を修正)。修正箇所の一次資料を照合。出典ごとの取得日は変えていない。