「保育士の副業は禁止されているのか」「届け出なくても分からないのでは」。このページは、副業ができるかどうかの決まり方と、始める前に確かめることをまとめます。どの副業がよいか、いくら稼げるかは書いていません。隠して始める方法も書きません。

保育士の副業は雇用形態で決まる|根拠と許可・届出の表

雇用形態決める根拠許可・届出の相手確かめる書類
私立の園の正職員・パート園の就業規則(国のモデル就業規則は第70条)園(届出制か許可制かは就業規則による)就業規則の副業・兼業の条文、届出の様式
派遣で働く保育士派遣会社(雇用主)の就業規則派遣会社派遣会社の就業規則
公立の園の正規職員、フルタイムの会計年度任用職員地方公務員法第38条、自治体の許可の基準任命権者(許可が必要)自治体の兼業許可の基準、申請の様式
公立の園のパートタイムの会計年度任用職員地方公務員法第38条ただし書(許可制の対象外)自治体の定めにより報告を求められることがある任用のときに示される勤務条件の書面
公立の幼保連携型認定こども園の保育教諭地方公務員法第38条、教育公務員特例法第17条任命権者自治体の基準

出典:厚生労働省「モデル就業規則」(令和7年12月版)第70条、地方公務員法第38条、総務省「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」p28、教育公務員特例法第17条。取得日:2026年9月28日。

どの雇用形態でも、保育士である以上、児童福祉法の信用失墜行為の禁止(第18条の21)と秘密保持義務(第18条の22)がかかります。公立の職員は、職務に専念する義務なども、副業の許可とは別に守る必要があります。

保育士の副業で、私立の園の就業規則に書かれていること

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)は、企業に対し、原則として副業・兼業を認める方向で検討することが適当だとしています。また、労働者が副業・兼業について相談・自己申告したことを理由に、不利益な取扱いをすることはできないとしています。

国のモデル就業規則(令和7年12月版)第70条は、次の形になっています。

  • 労働者は、勤務時間外に、他の会社等の業務に従事することができる。
  • 会社は、労働者からの届出に基づき、次のいずれかに当たる場合は、禁止・制限できる:労務提供上の支障がある、企業秘密が漏れる、会社の名誉や信用を損なう・信頼関係を壊す、競業により企業の利益を害する。

これは国の「ひな形」で、自分の園の就業規則が同じとは限りません。許可制の園もあります。就業規則の副業・兼業の条文と、届出の様式を確かめてください。厚生労働省のページや冊子には、この規定を「第68条」と書いた古い版の表記が残っています。

保育士の副業で、公立の園の職員が確かめること

地方公務員は、営利企業の役員になること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することについて、任命権者の許可が必要です(地方公務員法第38条第1項)。許可の基準は、人事委員会規則などで定めることができます。

総務省は令和7年6月11日の通知で、次のことを示しています。

  • 地方公務員も、営利企業の従業員との兼業ができること。
  • 許可を受けて兼業している職員が異動した場合は、改めて許可の手続きが必要なこと。

同じ通知によると、令和6年4月1日時点で、兼業許可の基準を設けている都道府県・市区町村は64%、その基準を庁内外に公表しているのは56%でした。基準を公表していない自治体もあるので、自分の自治体の人事担当か、勤め先の園長に確かめてください。

パートタイムの会計年度任用職員は、地方公務員法第38条の許可制の対象外です。総務省のマニュアルは、一律に禁止することは適切ではないとしつつ、兼業先を報告させることなどは考えられるとしています。フルタイムの会計年度任用職員は、正規職員と同じく許可が必要です。公立の園の入口ごとの違いは、保育士が公務員として働く方法にまとめています。

保育士の副業で、雇われて働く場合の労働時間

副業で別の園や会社に雇われて働く場合、労働時間は本業と通算されます(労働基準法第38条第1項。事業主が違う場合も含む)。

  • 厚生労働省のガイドラインでは、まず各職場の所定労働時間を、労働契約を結んだ順に通算します。次に所定外労働時間を、実際に働いた順に通算します。法定労働時間を超えた部分が時間外労働となり、その部分を働かせた使用者が割増賃金を支払います。後から契約した職場の時間が、すべて時間外になるわけではありません。
  • 36協定の限度時間は、事業場ごとの協定の内容を規制するもので、通算されません。ただし、時間外・休日労働の合計を単月100時間未満、複数月平均80時間以内とする要件は、通算して適用されます。
  • 本業の法定休日に副業で働いても、本業の事業場の法定休日は確保されたものとされています(ガイドラインQ&A 問1-16)。

残業代の基本は、保育士の残業の記事にまとめています。副業を始めたら、本業と副業の両方の出勤・退勤の時刻を記録しておいてください。

保育士の副業で、税の申告が必要になる場合

受け取り方所得税の確定申告が必要になる場合住民税
給与は本業からだけで、副業は給与以外(業務委託など)給与以外の所得の合計が、国税庁の示す基準の金額を超える場合所得税の確定申告をしない場合も、給与以外の所得があれば申告が必要
複数の勤め先から給与を受け取る(副業も雇われて働く)年末調整されなかった給与の収入金額と、給与以外の所得の合計が、国税庁の示す基準の金額を超える場合(例外の条件あり)同上

出典:国税庁 タックスアンサー No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」、地方税法第317条の2・第317条の3。取得日:2026年9月28日。

  • 所得税の確定申告をすれば、住民税の申告もしたものとみなされます(地方税法第317条の3)。
  • 厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)は、副業・兼業で20万円を超える副収入がある場合は、企業の年末調整ではなく個人の確定申告が必要だとしています。自分がどの場合に当たるか(給与を複数の勤め先から受け取る場合の数え方など)は、国税庁 No.1900 で確かめてください。
  • 医療費控除などで還付を受けるために確定申告をするときは、基準の金額以下の所得も含めて申告します。
  • 自分が申告の対象かどうかは、国税庁の案内や税務署で確かめてください。この記事は税額を計算しません。

保育士の副業を始める前の確認リスト

  1. 始める前:就業規則(公立は自治体の許可基準)で、届出制か許可制か、禁止・制限の条件を確かめる。
  2. 届出・許可:届出には、副業先の名前、契約の日、所定の労働日と時間、始業・終業の時刻、所定外労働の見込みを書くことが多い(厚生労働省の届出様式例の項目)。公立の職員は、許可の有効期間も確かめる。
  3. 始めた後:本業と副業の労働時間を両方記録する。体調を崩していないかを自分でも確かめる。
  4. 保育士として:業務で知った人の秘密を、正当な理由なく漏らさない義務があります(児童福祉法第18条の22)。園名・写真を発信する際は、秘密に当たるかとは別に、園の規程や掲載の許可を確認してください。後者は編集部の確認提案で、園名の使用を一律に禁じる法律ではありません。
  5. 異動・転職したとき:公立の職員は許可の取り直しが必要。私立でも、転職先の就業規則で改めて確かめる。
  6. 年が明けたら:確定申告・住民税の申告が必要かを確かめる。

副業を考えた理由が今の園の給与への不満なら、保育士の給料の記事で、今の条件と他の求人の条件を同じ欄で比べることもできます。

保育士の副業について、この記事では分からないこと

  • 自分の園や自治体の就業規則・許可基準の中身。
  • 副業が理由で懲戒処分になるかどうか。個別の事情によります。
  • いわゆる「年収の壁」の金額、社会保険・雇用保険の複数就業の扱い(今回は確かめていません)。
  • 個人でベビーシッターをする場合に、認可外保育施設の届出が必要かどうか。
  • 保育士の副業の割合や、副業の収入の統計(公的な統計は見つかりませんでした)。

保育士の副業でよくある質問

公立の保育園で働く保育士は、副業が禁止されていますか?

一律に禁止ではありません。地方公務員は、営利企業への従事などに任命権者の許可が必要です(地方公務員法第38条)。総務省は令和7年6月の通知で、地方公務員も営利企業の従業員との兼業ができることを示しています。パートタイムの会計年度任用職員は、この許可制の対象外です。

私立の保育園の就業規則に副業の定めがない場合は、自由にしていいですか?

この記事では「自由」とは言えません。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)第70条は、勤務時間外の副業を認めたうえで、労働者からの届出に基づき、支障がある場合などに禁止・制限できる形になっています。定めがない場合も、始める前に園に確かめてください。

保育士が副業で雇われて働くと、労働時間はどう数えますか?

労働基準法第38条第1項により、事業主が違っても労働時間は通算されます。厚生労働省のガイドラインでは、所定労働時間を契約締結の順に通算し、その後、所定外労働時間を実際に働いた順に通算します。法定労働時間を超えた部分が時間外労働となり、その部分を働かせた使用者が割増賃金を支払います。本業と副業の両方の労働時間を記録してください。

副業の所得が少なくて所得税の確定申告が要らないなら、申告は何も要りませんか?

所得税の確定申告が要らない場合でも、給与以外の所得があれば住民税の申告が必要です(地方税法第317条の2)。また、複数の勤め先から給与を受け取っている人は、確定申告が必要かどうかの基準が違います。基準の金額は国税庁 No.1900 で確かめてください。

副業のことを園の保護者に話したり、SNSに書いたりしてもいいですか?

保育士には、児童福祉法で信用を傷つける行為の禁止(第18条の21)と、業務で知った秘密を漏らさない義務(第18条の22)があります。副業の内容にかかわらず、園の子どもや保護者の情報を副業やSNSで使わないでください。

更新履歴

2026年9月28日:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)・Q&A・届出様式例・モデル就業規則(令和7年12月版)、労働基準法第38条、地方公務員法第38条、総務省の会計年度任用職員マニュアルと令和7年6月11日の通知、教育公務員特例法第17条、児童福祉法、国税庁 No.1900、地方税法第317条の2を確認して新規作成。雇用形態別の表と、始める前の確認リストを掲載。 2026年9月29日:題名を「問いと答え」の形にし、冒頭の答えを短くした(前の答えと根拠は「根拠と補足」に移した)。 2026年9月30日:監査の指摘に対応(指摘 LAW-03・LAW-04 を修正。公表日を確認できない資料に基づく数字 5件を外すか、公表日のある資料に付け替え)。修正箇所の一次資料を照合。出典ごとの取得日は変えていない。