「公務員の保育士になるには試験に受かるしかないのか」「会計年度任用職員は、何が違うのか」。このページでは、法令と総務省の資料で確かめられた違いを、同じ項目で並べます。公立と私立の給与の数字は、保育士の給料の記事にまとめています。
保育士が公務員として働く4つの入口を比べる表
| 入口 | 根拠の法令 | 採用の方法 | 任期 | 給与の決まり方 | 兼業(地方公務員法第38条) |
|---|---|---|---|---|---|
| 正規職員 | 地方公務員法第15条・第17条の2・第21条・第22条 | 人事委員会のある自治体では競争試験が原則。合格者は採用候補者名簿に載り、その中から採用される。条件付採用の期間は原則6か月 | 定めなし | 給料と手当(地方自治法第204条) | 任命権者の許可が必要 |
| 任期付職員(育児休業などの代替) | 任期付職員法、地方公務員の育児休業等に関する法律第6条 | 自治体の定める選考(面接など) | 育児休業などを請求した期間を限度とする | 給料と手当 | 任命権者の許可が必要 |
| 会計年度任用職員(フルタイム) | 地方公務員法第22条の2第1項第2号 | 競争試験または選考(自治体の採用案内で確認)。条件付採用の期間は原則1か月 | 採用日からその会計年度末までの範囲内で、任命権者が定める期間 | 給料と、旅費・一定の手当(地方自治法第204条) | 任命権者の許可が必要 |
| 会計年度任用職員(パートタイム) | 地方公務員法第22条の2第1項第1号 | 競争試験または選考(自治体の採用案内で確認)。条件付採用の期間は原則1か月 | 採用日からその会計年度末までの範囲内で、任命権者が定める期間 | 報酬と費用弁償。条例で期末手当・勤勉手当(地方自治法第203条の2) | 許可制の対象外(職務に専念する義務などは適用) |
出典:地方公務員法(第15条・第16条・第17条の2・第21条・第22条・第22条の2・第38条)、地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律、地方公務員の育児休業等に関する法律第6条、地方自治法第203条の2・第204条、総務省「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」p28〜29・p45(いずれも2026年9月28日に確認)。
- 公務員には、労働契約法は適用されません(同法第21条)。働く条件は、法令・条例と、任用のときに示される書面で決まります。
- 会計年度任用職員が翌年度も働く場合は、「更新」ではなく、新たな職に改めて任用されたもの(再度の任用)とされています。国がかつて示していた再度の任用の回数の例は、今は示されていません。
- 公立の園に派遣会社から派遣されて働く場合は、公務員ではありません。雇用主は派遣会社です(保育士の派遣の記事)。
- 欠格条項(地方公務員法第16条)に当たる人は、条例で定める例外を除き、原則として採用されません。応募先の採用案内を確かめてください。
- 条件付採用の期間は、自治体の規則で延長される場合があります。募集要項と規則で確認してください。
保育士が公務員として働く人の数(総務省の調査)
| 区分 | 人数 | 時点 | 何を数えた数か |
|---|---|---|---|
| 常勤の保育所保育士 | 84,015人 | 令和7年4月1日 | 地方公共団体定員管理調査。一般職のうち常時勤務する職員 |
| 会計年度任用職員の「保育士等」 | 97,468人 | 令和7年4月1日 | 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査。フルタイムとパートタイムの合計 |
出典:総務省「令和7年 地方公共団体定員管理調査結果」(令和8年3月)p20、「令和7年度 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果」(令和7年12月25日通知)別添1 p3。取得日:2026年9月28日。
2つの数は、調査も区分も違います(「保育士等」の範囲は同じではありません)。この2つを比べて「非正規のほうが多い」とは言えません。なお、総務省の地方公務員給与実態調査(令和7年)には保育士という職種の区分がなく、公務員の保育士の全国平均給与は、この記事では示していません。
保育士が公務員の採用案内を読むときの12項目
自治体の採用案内(受験案内・募集要項)には、次の項目が書かれています。複数の自治体や入口を比べるときに、同じ順番で読むと違いが分かります。
| 項目 | 読むところ | 埼玉県・さいたま市の案内の例(令和8年度) |
|---|---|---|
| 1 区分の名前 | 正規・任期付・会計年度のどれか | さいたま市は、正規・任期付・会計年度(フル・パート)を別々に募集 |
| 2 勤務先の種類 | 保育所か、ほかの施設か | 埼玉県の保育士は、児童相談所の一時保護所に勤務 |
| 3 年齢の条件 | 上限・下限と、基準の日 | さいたま市の正規(職務経験者)は、年齢の上限と下限がある |
| 4 資格 | 保育士登録の有無、登録見込みの期限 | — |
| 5 経験年数 | 数え方(常勤か、非常勤も含むか) | — |
| 6 欠格条項・国籍 | 受験できない人の条件 | — |
| 7 選考の方法 | 筆記・論文・面接・実技、人事委員会か任命権者か | 埼玉県は、任命権者の面接の後、人事委員会の論文と面接 |
| 8 合格から採用まで | 採用候補者名簿、その有効期間 | 名簿に載っても、採用が決まったわけではない(地方公務員法第21条) |
| 9 任期と翌年度 | 任期の終わりの日、再度の任用の扱い | さいたま市の任期付は、職員の産前産後休暇・育児休業の期間が任期 |
| 10 給与の欄の前提 | 学歴・経験の換算、地域手当、基準日、給料か報酬か | 給与例には、学歴や経験の前提が書かれている |
| 11 勤務時間・休暇・兼業 | 勤務時間、休暇、兼業ができるか | さいたま市の会計年度は、フルタイムは兼業禁止、パートタイムは兼業可 |
| 12 採用前の手続き | 提出書類、採用前の確認 | — |
出典:埼玉県「令和8年度埼玉県職員採用選考(保育士)のお知らせ」(2026年5月11日)、さいたま市「令和8年度さいたま市職員採用選考 保育士(任期付職員)」(2026年7月23日)、同「公立保育園のフルタイム勤務の保育士(会計年度任用職員)」「同パートタイム勤務」(2026年9月14日)、同「採用試験(選考)のしくみ」。取得日:2026年9月28日。例は、この2つの自治体の案内に書かれていたことで、ほかの自治体に当てはまるとは限りません。
会計年度任用職員や任期付職員として働いた経験を、正規職員の採用で評価する自治体もあります。さいたま市の任期付職員の案内には、正規職員の採用試験も受けられると書かれています。応募する自治体の案内で確かめてください。
保育士が公務員として働く前に、確かめておくこと
- 辞めるときの手続きは、私立の園とは違います。年度の途中で辞める場合の違いは、年度途中の退職の記事にまとめています。
- 会計年度任用職員は、勤務時間などによって雇用保険の扱いが違うことがあります。任用のときに示される書面で確かめてください。
- 公立の施設は、私立の施設が受ける処遇改善等加算の対象から外れます。研修の修了が給与にどう反映されるかは、自治体の給与制度によります(キャリアアップ研修の記事)。
公務員の採用は自治体の試験や選考で決まり、転職エージェントを通して応募するものではありません。私立の園も並行して比べたい場合は、転職エージェントの比較を参考にしてください。
保育士が公務員として働くことについて、この記事では分からないこと
- 公務員の保育士の全国平均給与と、年代別の年収(国の統計に保育士の区分がありません)。
- 自治体ごとの採用候補者名簿の有効期間、年齢の条件、倍率。
- 公立の園と私立の園で、仕事の内容や異動の頻度がどう違うか。
- 令和8年12月に施行される予定の、こども性暴力防止法に基づく採用前の確認の手続きの中身。
保育士が公務員として働くことでよくある質問
保育士が公務員になるには、必ず採用試験に合格する必要がありますか?
正規職員は、人事委員会のある自治体では競争試験が原則です(地方公務員法第17条の2)。ただし、任期付職員や会計年度任用職員は、面接などの選考で採用されることがあります。選考でも、能力の実証に基づいて採用されます(同法第15条)。
会計年度任用職員は、毎年「更新」されるのですか?
総務省のマニュアルでは、翌年度も同じ人が働く場合は、新たな職に改めて任用されたものと整理されています。「更新」ではなく「再度の任用」で、その都度、能力の実証が必要とされています。
公務員の保育士は、副業をしてもいいですか?
正規職員とフルタイムの会計年度任用職員は、営利企業への従事などに任命権者の許可が必要です(地方公務員法第38条)。パートタイムの会計年度任用職員は、この許可制の対象外とされています。ただし、職務に専念する義務などは適用されます。
公務員の保育士の平均給与は、国の統計で分かりますか?
総務省の地方公務員給与実態調査(令和7年)には、保育士という職種の区分がありません。この記事では全国平均を示していません。給与は、応募する自治体の採用案内と給与条例で確かめてください。
県の保育士の採用に合格すると、保育所で働くのですか?
県によります。たとえば埼玉県の令和8年度の保育士の採用選考は、児童相談所の一時保護所に勤める保育士の採用です。勤務先の種類は、受験案内で必ず確かめてください。
更新履歴
2026年9月28日:地方公務員法、地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律、地方公務員の育児休業等に関する法律、地方自治法第203条の2・第204条、労働契約法第21条、総務省の会計年度任用職員制度の事務処理マニュアル・調査結果・定員管理調査、埼玉県・さいたま市の採用案内を確認して新規作成。4つの入口の比較表と、採用案内を読む12項目を掲載。 2026年9月29日:題名を「問いと答え」の形にし、冒頭の答えを短くした(前の答えと根拠は「根拠と補足」に移した)。 2026年9月30日:監査の指摘に対応(指摘 LAW-06・LAW-07・LAW-08 を修正。公表日を確認できない資料に基づく数字 2件を外すか、公表日のある資料に付け替え)。修正箇所の一次資料を照合。出典ごとの取得日は変えていない。
